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Heaven for Everyone と仮定法
日時: 2021/11/25 10:48
名前: さつき

みなさまこんにちは。たまーに投稿させていただくさつきと申すものです。
Sweetさんのご紹介のロジャーのライブ映像、私も拝見しました。
ロジャーのボーカル、ブライアンのギター、キーボードのスパイク・エドニー、
他のみんなもニコニコしていて素晴らしいですね。

ところで、ロジャーのボーカルといえば、私はメイドインヘブンに入っているHeaven for Everyoneを思い出します。
この曲はメイドインヘブンでフレディが歌っていますが、その前に、ザ・クロスでロジャーが歌っています。
フレディの声、ロジャーの声、どちらのバージョンも本当に心に残る曲になっています。
実は私、恥ずかしいのですが、この曲を歌うと、あまりの歌詞の良さに、いつも涙ぐんでしまいます。
なぜかというと、全編に英語の「仮定法」が使われているからです。
今回、久しぶりの書き込みなのですが、その「歌詞のすばらしさ」を、「仮定法」を説明しながらお伝えしたいと思います。
長文なので4回に分けます。管理人様、貴重なスペースを使わせていただき大変申し訳ございません。。。

「仮定法」と聞くと、学生時代に「学校英語の最難関」などと言われて苦労した人も多いかもしれません
(で、結局よくわからないままで終わります・笑)。
実際、私も学校を出たあと、英語の「仮定法」とは何だろうとずっと考えてきました。
そして、ある時、「はっ」と理解できたのです。
学校英語の参考書を見ると、今でも延々と分かりにくい解説が続く「仮定法」。
「もし・・・だったら」ということでしょう?と言われる方もいるかもしれません。でもそうではないのです。
仮定法は、日本語でも幼稚園の子供が使うような、簡単で、非常に重要な「語法」です。
今から書くことをお読みになれば、長年分からなかった英語の「仮定法」が5秒で分かります。

★英語の「仮定法」は、日本語の「・・・たら/れば、・・・なのに。」という言い方にあたります。以上。(笑)

日本語では、文の終わりに「・・・のに。」と「のに」という語を付けますが、英語ではその代わりに、「助動詞を過去形にする」のです。
「仮定法」の基本は、たったこれだけです。

例を挙げれば、
「あと5分早く家を出ていたら、電車に間に合ったのに。」
「あのときペンを持っていれば、あの芸能人のサインをもらったのに。」
「もし明日パパがおうちにいたらうれしいのに。。」
「昨日はもっと早く起きればよかったのに!」

など、私たちが普段しょっちゅう使う言いまわしですね。

私が今まで見聞きした範囲では、(知り合いも含めて)この英語の仮定法を使いこなしている人を見たことがありません。
つまり、英語人から見たら、ひょっとすると日本人は決して(英語で)「・・・たら/れば、・・・のに。」という言い方をしない不思議な人たちだと思っているかもしれません。ちょっと残念ですね。

ちなみに、英文法では、文の形を「直説法(ちょくせっぽう)」、「命令法」、「仮定法」の3種類に分けます。
「命令法」は、命令する感じのする言い方(つまり、あの「動詞の原形で始まる命令文」です)、
「直説法」は仮定法・命令法以外の文(つまり、一般的な普通の文)のことです。
また、ここで使っている「法」とは、「方法・やり方」という意味ではありません。
英語ではこの「法」のことを「mood(ムード)」というのですが、文字通り、雰囲気・感じ、という意味です。
英語人は英語の文章を、このような「・・・たら/れば、・・・のに。」の雰囲気の文、命令する雰囲気の文、それ以外の文、
という3種類に分けるのですが、私たち日本語人はそういう分け方をしません。
なので、その説明がないまま英語の仮定法を教えても、分かるわけがありません。

蛇足ですが、直説法・命令法・仮定法は英単語ではそれぞれindicative mood, imperative mood, conjunctive moodと言います。
これは直訳すると「事実を述べる雰囲気」、「命令する雰囲気」、「接続する雰囲気」となって、
なんと「仮定法」の英単語には「仮定する」という意味がありません!

 そして、仮定法に戻りますが、
「文法用語(!)」で言えば、「・・・たら/れば、」の部分を「条件節(従属節)」、「・・・のに。」の部分を主節(帰結節)といいます。
条件節や主節をどう書けばよいかは、まさに、参考書に「これでもか」というほど説明がありますので、ここでは省きます。

(2につづく)
メンテ

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Re: Heaven for Everyone と仮定法 ( No.1 )
日時: 2021/11/25 10:49
名前: さつき

(2)

前置きが大変長くなりましたが、
このHeaven for everyoneという曲は、まさに全編にわたって、この仮定法を使って、歌詞の表す気持ちを伝えています。

曲中でリフレインとして繰り返される
This could be heaven.
という短い文がその核心です。
上で書いたように、ここでは助動詞canが過去形になっています。これが「仮定法」です。
この文の場合は、条件節(・・・たら/れば)の部分がなくて、主節(・・・のに)だけになっています。

 もしこの文が
This can be heaven. (これは「直説法」です)
になっていたら、意味は文字通り
「ここは天国にすることができる。」
ということになります。それを仮定法
This could be heaven.
にすると、
「ここは天国にすることができる『のに』。」
ということになります。
意味は簡単ですね。「ここは天国にすることができるのに、実際には天国ではない。」ということです。

つまりロジャーやフレディは、この曲で
「本当は天国にできるこの世界が、全然そうなっていないじゃないか!? どういうことだ!?」というメッセージを繰り返し歌っているのです。
それが私が涙ぐんでしまう理由です。

 Bメロに出てくる
This world could be fed.
This world could be fun.
も全く同じです。
can be fed(食料を供給できる)、can be fun(楽しい状態にできる)がそれぞれ仮定法になっているので、
「この世界は、食べ物で満たせるのに、楽しい世界にできるのに(そうではない)!」という意味になります。

This world could be free.
This world could be one.
も同じですね。

また、それ以外にも、同じ文を少し変えて、couldをshouldに置き換えた文もあります。
shouldはshall(〜しなければならない)の過去形ですから、これも同様に仮定法になって、
「・・・しなければならない『のに』(してないじゃないか)!」という意味になります。
(ちなみに、仮定法で使う助動詞にはもう一つwillの過去形のwouldがあります。
couldが「・・・できるのに」、shouldが「・・・しなければならないのに」という「特定の意味」を持つのに対して
wouldは「・・・であるのに/・・・するのに」という、couldやshouldのような「味付け」のない素直な「のに」の意味になります)

このHeaven for everyoneという曲の歌詞は、ネットで探すと数人の方が和訳されています。
やはり非常に印象的な内容なのだと、うれしく思います。
ただ、残念なのは、私が見たすべての和訳例がcouldやshouldの仮定法の意味を全く無視して、「正反対の意味」に翻訳している点です。
(すべて、「ここは天国なのだろう」、「ここは天国かもしれない」と、この世界が天国であることを「肯定」するような翻訳です)

これまでの説明でお分かりのように、
この歌詞は、現在の世界の状況を、仮定法を使って「否定」し、「こんな状態ではダメだ」と言っているのが本当の意味です。

ところでcouldには、仮定法でない意味もあります。
主なものとして「・・・でありうる」、「・・・してもらえないだろうか」、「・・・できたかもしれない」などです
(これは、日本語の「のに」にも、「仮定法」以外に、
「もう秋なのに今日は真夏日だ。」、「このレコードのジャケットの表は黒なのに、裏は白だ。」
などという別の意味の用法があるのと似ています)。
ネットの翻訳者の方はうっかりこれらの意味に取られたのかとも思います。

終わりのほうで、そこまでに出てきたフレーズ
This should be heaven for everyone.
に、whenを付けて
When this should be heaven for everyone.
と、「ここがみんなの天国でなければならない時なのに(今がその時なのに誰も改善しようとしていないじゃないか)!」と訴えているのも巧みです。

(3につづく)
メンテ
Re: Heaven for Everyone と仮定法 ( No.2 )
日時: 2021/11/25 10:49
名前: さつき

(3)

長くてすみません。(4)で終ります。
余談ですが、フレディの最後の曲といわれるThe show must go onの歌詞には、
I can fly, my friends!
という一節があります。これは助動詞が過去形でないので「仮定法」ではなく、「直説法」です。
つまり、仮定法の「飛べるのに」ではなく、「飛べるんだ!」という意味です。
最期を悟ったフレディが、「友よ、僕は(本当に)空を飛べるんだよ!」と、
希望を振り絞った渾身の一節と思います。(また涙ぐんでしまいました

 昔、学習塾のTVCMで、熱血漢風の英語の先生が生徒に仮定法を教えている場面がありました。
熱血先生が授業で仮定法を
If I were a bird, I could fly!
と教えると、それを聞いていた女子生徒が、下校途中の道で
If I were a bird, I could fly!
と叫んで、嬉しそうに飛び跳ねていました。
おそらく彼女は「もし私が鳥だったら空を飛べるんだ!」と希望に満ちたセリフとして叫んでいたのだと思いますが、
この文の意味は「私が鳥だったら空を飛べるのにね(でも鳥じゃないから飛べないよ)。」ということです。
つまり彼女は「私は鳥じゃないから空を飛べないんだー!」と嬉しそうに叫んでいた、ということです。
学習塾のCM自体がこんなことをやっているようでは、明治維新以来150年間続けてきた日本の英語教育も一体どうなることでしょう。

もう一つ、ネットの和訳で気になったのは、仮定法でないのですが、
Listen:
What people do to other souls
というところの2行目(What...)を、和訳した皆さんがそろって、
「他人に何をしたのか?」
というような「疑問文」に訳していたことです。
これはその前のListenと合わせて
Listen what people do to other souls.
という文として考えるべきものです(もしWhat〜が疑問文なら、What do people do to other souls.と、疑問文のdoがwhatの直後に入るはずです。
これは、仮定法と同様、英文法の難敵の「関係代名詞」の典型例です。
ここでは「人々が他の魂にすること」という意味になります。

(4につづく)

メンテ
Re: Heaven for Everyone と仮定法 ( No.3 )
日時: 2021/11/25 10:51
名前: さつき

(4)

長々と書いてきましたが、
クイーンの曲の歌詞は、英文法を踏まえて表現をきちんと理解すると、非常に深い意味であることがわかります。
その意味でもクイーン曲を味わうのは大変趣深いものと思います。
 最後に、Heaven for Everyoneの和訳の「さつき案」を載せておきます。
This could be heaven.のリフレインの効果を知っていただきたくて、全文を載せました。長くて申し訳ありません。
基本的に直訳風に翻訳したので、特に仮定法以外の部分はぎこちないかもしれません。すみません。


【さつき案】
Heaven for Everyone(クイーン版)
みんなの天国に

This could be heaven (for everyone)
ここは天国にできるのに(みんなの)
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに

In these days of cool reflection (reflection)
しらけた気持ちの日々に(気持ちの)
You come to me and everything seems alright
君が来ればすべてが大丈夫に見える
In these days of cold affections
冷めた愛情の日々に
You sit by me and everything's fine
君が隣に座ればすべてがすばらしい

This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに
This world could be fed
この世界は食べ物で満たせるのに
This world could be fun
この世界は楽しさで満たせるのに

This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに
This world could be free
この世界は自由なものにできるのに
This world could be one
この世界は一つにできるのに

In this world of cool deception
冷たいごまかしのこの世界で
Just your smile can smooth my ride
君の笑顔が僕の行く道をならしてくれる
These troubled days of cruel rejection
ひどく拒まれて惑う日々
You come to me, soothe my troubled mind
君が来て、僕のすさんだ心をいやしてくれる

Yeah,
そうさ、
This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに
This world could be fed
この世界は食べ物で満たせるのに
This world could be fun
この世界は楽しさで満たせるのに
This should be love for everyone (yeah)
これをみんなの愛にしなければならないのに(そうさ)
This world should be free
この世界は自由なものでなければいけないのに
This world could be one
この世界は一つになれるのに
We should bring love to our daughters and sons
私たちは自分の娘や息子に愛をもたらさなければいけないのに
Love, love, love, love
愛、愛、愛、愛
This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに

You know that
なあ
(This could be heaven for everyone)
(ここはみんなの天国にできるのに)
Yes!
そうだよ!
(This could be heaven for everyone)
(ここはみんなの天国にできるのに)

Listen:
聞いてくれ:
What people do to other souls
人々が他人の魂にすることを
They take their lives, destroy their goals
やつらは彼らの暮らしを奪い、行く末を壊す
Their basic pride and dignity
彼らのささやかな誇りと尊厳は
Is stripped and torn and shown no pity
むしりとられ、ひきさかれ、情けのかけらもない
When this should be heaven for everyone
ここがみんなの天国でなければならない時なのに

This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven for everyone
ここはみんなの天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
Could be heaven for everyone
みんなの天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
(This could be heaven)
(ここは天国にできるのに)
This could be heaven
ここは天国にできるのに
Could be heaven for everyone
みんなの天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
(This could be heaven)
(みんなの天国にできるのに)
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
Lord!
神よ!
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven
ここは天国にできるのに
This could be heaven…
ここは天国にできるのに...
For everyone
みんなの
For everyone
みんなの


いかがでしょうか。。。
長文失礼いたしました。
(おわり)
メンテ

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