鎌倉の七福神めぐり

事の起こりは、クレジットカードの永久不滅ポイントだった。
昨年の春くらいだったかな?・・・よく思い出せないけど、ある日、旦那のクレジットカードの請求書を見たら、 永久不滅ポイントがかなり貯まっているのに気が付いた。

「ねぇ、このポイント全部使うとしたら、何が貰えるんだろうね〜?」と、気軽に言った事から始まって、 いつのまにか、そのポイントは鎌倉のホテルの宿泊券と食事券に変わって手元に届いたのだった。 でもその頃の私は忙しかったし、その利用期間が1年間有効だったこともあって、引き出しの奥に入れたままにしていた。

月日は過ぎて・・・7月頃かな?引き出しの整理をしていたら、その宿泊券と食事券を見つけた。
すっかり忘れていたから、私は慌てて封筒の中からそれを取り出し、有効期限を確認した。
チケットには、2009年10月31日までと記載してあった。(間に合ったぁ〜)

それから旦那と相談して、夏休み期間はどこも混み合うだろうから、9月に行こうって事になり、早速宿泊先の予約をとった。
そしてそのスケジュールをどうしようかって話になり、 鎌倉の観光スポットをネットで調べていたら、「七福神めぐり」というページを見つけた。
そこには、「七福神を祀られている神社仏閣を順に巡り、ご朱印帳または、所定の色紙にご朱印をおしてもらう(300円)」と書かれてあった。

↓七福神めぐり専用の色紙。

スタンプラリーとはわけが違う、というのは分かっていたけど、「七福神さま」って、それまで聞いたことはあっても、 宝船に乗ってる神様と仏様?くらいのイメージしかなくて知識も乏しかった。
そこで、そういう事に詳しい子カバ長女に訊いてみた。
すると、いろんな資料とか参考書とか持ち出してきて、七福神のマンガまで見せてくれた。 私は好奇心もあって、子カバ長女の思うツボのように七福神にハマった。

その後、旦那と話し合って、車ではなく、電車を使い、しかもお弁当も作っていくという「費用が安く済む1泊2日の小旅行スケジュール」を作成した。
「七福神めぐり」は歩いてまわるので、リュックサックと水筒だけで十分なのだ!・・・まぁ、それ以外に、二人分の着替えとか、 その他諸々(ほとんど私のだけど)は、コンパクトサイズのスーツケースに詰め込んで、 それは旦那に持ってもらったけど。

出発の日。お天気にも恵まれ、朝早くからお弁当を作って、電車に乗り込んだ。
横浜って結構遠いんだなぁ〜と思いながら、電車の中でウトウト。 しばらくして、旦那に起こされて駅を降りると、今度は江ノ電に乗り換えた。
私は江ノ電は初めてだった。これって路面電車?列車?電車?この3つをミックスしたような感じがしたが、 PASUMO(パスモ)でOKってとこは都会の電車っぽい。
しかし乗車してすぐ、いつもの電車の車窓から見える景色とは全然違って、 あんなに民家の軒先をすれすれに通るなんて知らなくて驚いた。それも、それぞれの家の中まで見える。 私は失礼とは思いつつも、ついつい家の中の住人の様子までじーっと見てしまった。

車窓から海が見えてきたところで江ノ電を降りて、宿泊先に向かった。
ホテルにスーツケースを置いてから、(お弁当だけ持って)早速、「七福神めぐり」をスタート。
しかし、腹が減っては戦はできぬってことで、先ずは、七里ガ浜の防波堤のところでお弁当を広げた。
9月半ばの残暑が残る陽射しとともに上空から鳶の鳴き声がする。 鳶の鳴き声って私はとても好きだ。それに海風に乗って羽をひろげたまま上空に円を描くような飛び方も。
その鳶とは対照的に、その下ではサーフボードで波乗りしている人たちがたくさんいた。



七福神をアップにしてみました↓

さて、最初に向かったのは、御霊神社の「福禄寿さま」。
七福神の中では「寿老人さま」とともに、一番知名度が低いらしい。私も子カバ長女に教えてもらうまで「ふくろくじゅ」さまと読めなかったし知らなかった。 頭が長くて、神様というより仙人のようなイメージを持っていたけど、実際に「福禄寿さま」を拝観したら、七福神の中で、一番好きになった。
それは、御霊神社の社務所の人の対応が、とても良かったからなんだけど、とても親切丁寧で、しかもずっと笑顔で色々と教えてくれた。
この事は、後に続く七福神めぐりで、重要な観察ポイントになるのだった。

御霊神社から少し歩いてまわって、10分くらいで着いたのは長谷寺の「大黒さま」。
ここは駐車場も広くて、大型観光バスが何台も停まっていた。
境内も広くて観音堂もご立派だったけど、私はどうも黄金色に輝いているのが苦手だ。罰あたりかもしれないけど、 神道で育った自分は仏壇に慣れていないからだと思う。
さて、その長谷観音堂の隣にある大黒堂に祀られている「大黒さま」をお参りして、 寺務所の人(お寺の場合は社務所とは言わない)に、ご朱印をお願いしたら、 チラッと私と旦那を見て、「七福神めぐりはスタンプラリーではありませんからね」と(上から目線で)言われた。 それも窘めるような口調で。
この時、旦那はよく聞き取れなかったみたいだけど、私はしっかり聞こえたから、 「わかっとります!」という言葉が喉まで出かかった。
なんとなく、この人の偉そうな態度が、出世の神の「大黒さま」とダブって見えた。

次は本覚寺を目指して、4〜5キロほどの距離を1時間以上歩いた。途中、道に迷ってしまい、 大幅に時間をロスしてしまったが、なんとか本覚寺に辿り着いた。
早速、境内にある夷堂に入って、「夷さま」をお参りした。「夷さま」は漆黒の像で、ちょっとコワイ感じがした。 エビスビールに描かれているイメージとはかなり違う(当たり前だ!)。
そして、ご朱印をお願いしに行ったら、これがまた、売店のおばさんみたいな人で、少し面倒臭そうな態度が感じられた。 なぜなら、片手は腰にあて、ご朱印も、応対も、立ったままの姿勢だったからだ。 横着な人だなと思った。そして、その人は少し自慢するようにこう言った。
「あのね、七福神の中で日本の神様ってのは、夷さま一人だけなのよ」と。
それは事前に子カバ長女から聞いて知ってはいたけど、私は「そうなんですか〜」と知らないフリをした。 すると、今度は、色紙の真ん中に描かれた七福神のイラストを手で真ん中から分けるようにして、 「こっち(右側)の4人が神様で、こっち(左側)3人が仏様よ」と少し早口で言った。 それは初耳だったので私は、「え?!」と訊きなおしたのに、その人は急に笑いながらもっと早口になって 色々喋ってきたけど結局、有耶無耶にされてしまった。
どうも、この人は、一癖ありそうな感じがして仕方なかった。

本覚寺を出てから、またもや道に迷った。
30分ほど探し歩いて、なんとか妙隆寺を見つけた。そのくらい目立たないところにあったし、 妙隆寺には私と旦那以外は誰もいなかったからか、とてもひっそりした感じがした。
そこに祀られている小さな「寿老人さま」の像を拝んで、寺務所に行くと、窓口にはカーテンが引かれていて、これまたサビシイ感じ。 誰もいないのかな?と思ったら、窓口の横に「用事がある人はこのボタンを押して下さい」と書かれてあったのに気がついた。
少しして、奥の方の自宅?から出てきてくれたので、色紙を渡してご朱印をお願いすると、それを受け取ってまた奥に戻っていった。 待っている間も妙隆寺には私と旦那だけだった。
対応が素っ気無かったからか、ここは印象も薄かった。

そんな妙隆寺とは対照的だったのが、歩いて15分くらいで着いた宝戒寺。
ここはあの有名な「毘沙門天さま」が祀られている。
宝戒寺は入口から、たくさんの萩が左右に生い茂っていて、拝観者も多かった。
靴を脱いでお寺の中に上がると、「毘沙門天さまはあちら側にいらっしゃいます」と教えてくれた住職は、 きちんとした応対だった。それに姿勢も良くて、きびきびした動作が私には気持ちよく感じられた。 しかも冷静且つ丁寧な口調。ご朱印も立派だった。
ここの住職は小柄な人だったけど、とても堂々とした印象を受けた。

宝戒寺を後にしてまた歩いていたら、夕陽が眩しくなってきていた。
私と旦那は、鶴岡八幡宮へと急いだ。
ここに祀られているのは、七福神の唯一の女性「弁天さま」だ。
先ずは本殿にお参りして、そのあと来た道を戻るようにして途中から左へ細い道を行くと、「弁天さま」が拝観できる。 子カバ長女が見せてくれたマンガでは、弁天さまは結構ワガママな女神として描かれていたが、なんとなく私は親近感を覚えた。(^^;)
社務所に向かうと、応対に出てきた人の顔(表情)からは、瞬時に優しさが感じとれた。
ご朱印料の300円を支払う時、私も旦那も小銭の持ち合わせがなくなってしまい、万札からしか払えなった。 すると、「今ちょうどおつりが無いから300円はいいですよ。本堂に拝観していただければ」と笑顔で言ってくれた。 優しさの上に、とっても大らかな人だ。ご朱印もこれまた達筆で素晴らしい。
弁天さまは、こんな殿方たちに見守られているのねぇ〜。

そして最後の浄智寺を目指そうとしたが、鶴岡八幡宮の近くの御茶屋さんで、道を聞いたら 「もうこの時間からでは間に合わないよ」と言われたので、その日の七福神めぐりは、ここまでにした。

翌日、ホテルをチェックアウトして、私も旦那も足にちょっと筋肉痛を感じながら、 浄智寺近くの駅まで電車で向かった。
駅を降りてすぐ、コインロッカーに荷物(スーツケース)を預けようとしたら、 小さなロッカーしかなくて、スーツケースがあと1cmってとこで入らなかった。仕方なく持って歩くことに。・・旦那がネ(笑)

9月半ばとは言え、その日も夏のような陽射しにちょっと負けそうになる私。 夏でもあまり汗をかかない体質の旦那もスーツケースを持って歩くのが邪魔なようで、珍しく額に汗をかいていた。
10分ほど歩いたところで、浄智寺と書かれた案内板が見えた。「やったー」と思ったのも束の間、そこからエラい上り坂が続いていた。
汗だくになったところでやっと辿り着き、入口のところで私も旦那も汗を拭いつつ、拝観料を支払っていたら、 そこの人が、「そのスーツケース、こちらでお預かりしておきましょうか?」と言ってくれて、二人してものすごく喜んだ。(ありがたや〜)

さて、浄智寺は山の斜面にあって自然に囲まれている。境内は森を散策してるみたいだった。 田舎育ちの私は、樹や草花、それらの空気にまで懐かしさを感じた。
竹林を抜けたところに、洞窟に通じるトンネルがあって、その先に石造の「布袋さま」が見えた。 布袋さまは、見てるだけで癒される感じだった。私と旦那はそのふくよかなお腹を何度も撫でながら、元気をもらった。
旦那が「じゃ最後のご朱印をもらいに行こうか」と言って、布袋さまを後にして歩いたところで、なんとなく背後から呼ばれたような気がして、 後ろを振り返った。
そしたら、(信じられないかもしれないけど)、布袋さまのとこだけ後光が差しているように輝いていて、 しかも私に、ニッコリと笑って見送ってくれてるように見えた!その瞬間、ものすごく驚いたのもあったけど、 何故か自然に口から出たのが、「また来ます」だった。
多分、「またおいで」って言われてる気がしたんだとは思うけど、私が「また来ます」って言ったのは完全に無意識だった。 このシーンは今もハッキリ覚えてるし、一生忘れないと思う。
ここで最後のご朱印をもらう。
ここは寺務所兼用の自宅なのか、玄関が広くて来客用の長椅子まであった。 「どうぞ掛けてお待ち下さい」と言って応対してくれた女の人は物腰が柔らかい感じがしたけど、直感的に、芯は強そうだなと思った。

こうして、色紙に七つのご朱印が揃って、「七福神めぐり」は終了した。
かなり歩いたから足の疲れもあったけど、今回私が心底面白かったのは、七福神を祀っている神社仏閣の人たちが、 それぞれの七福神と何かしら共通するものを感じた事だった。
良くも悪くも、かなり面白い人物ウォチングになったし、興味深いものだった。
なぜなら、「大黒さま」「毘沙門天さま」「弁天さま」はインドのヒンズー教であり、「布袋さま」は中国の仏教、 「福禄寿さま」「寿老人さま」は道教、そして「夷さま」は日本の土着信仰(ご先祖)と、これだけの宗教が入り混じっているのだから、 それを祀っている神社仏閣の今回出会った7人が実際に集まったら、色紙に描かれたイラストのイメージとは、 かなり異なる雰囲気・状況を容易に想像できてしまうのだ。それはつまり、七福神さまとて同じ事が言えるだろう。

とは言え、その後、色紙は大事に額に入れて、床の間に飾りました。
でも、ある日ふと見たときに、額の隙間に宝くじが挟んであるのに気が付いた。
・・・旦那ってば!早速それかいっ。

ま、私もちょっと期待はしてしまってたんだけどね。
でも結果は、朱印料金(300円)しか当たってなかったよ(笑)

「世の中そんなに甘くはないぞ」 by 七福神


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