映画「ボヘミアン・ラプソディ」

2018年の冬、私が一番観たい映画は「グリンチ」だった。(子どもか!)
映画『ボヘミアン・ラプソディ』は公開されるや否や、破竹の勢いで観客動員数を記録していった。
そして異常なほどの盛り上がりぶりで、空前の"クイーンブーム"が巻き起こった。
本来ならそれを一番に喜ぶのがクイーンファンだろう。しかし今年ファン歴45年の私は正直、戸惑った。
映画が公開される前から、まったく興味を持てなかったからだ。
「ブライアンとロジャーが監修してるんだよ」と言われても、あの2人が映画に出てくるワケじゃなし。
たかが映画に騒ぎ過ぎじゃない?と、まわりが盛り上がれば盛り上がるほど、逆にシラけた気分になっていった。

ところが、私が管理人をしているクイーンのファンサイト掲示板にも映画を絶賛する書き込みが増えてきたある日、クイーンファンの友達から 「映画が公開されて1ヶ月経つと言うのに、いまだ一度も見てないってのはファンとしても、ファンサイトの管理人としても、それってどーなのよ?」と、 半分脅迫めいた感じに言われた事がきっかけで、仕方なしに映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観に行く破目に。。。
ちなみに、興味がない映画をわざわざ観に行ったのは今回が初めてだった。

で、観終わった直後の感想は、「なんだかなぁ〜」だった。
泣けるほどの感動もなく、かと言って悪くもなく、そっくりさんたちに、(心の中で)「それは無いっ!」とツッコミを入れまくっていた以外はフツーだった。 ただ、なぜこんな映画を今さら出したのか?という疑問がずっと残った。
ちなみに、クイーンのドキュメンタリーというと、『magic years』の3本組VHSビデオと『Days of our Lives』の DVDが既に発売されている。 この両方を見れば、クイーン史は一目瞭然だし映画より確かだし誤解もない。しかもメンバーのインタビューから当時の彼らの"本音"が聞ける、と思う。

映画を絶賛する人が「俳優4人とも若い頃のメンバーそっくりよ」って言うけど、クイーンファンに言わせたら、若い頃のロジャーのそっくりさんより 若い頃のロジャーを見てる方が断然良い。わざわざお金出してなんでそっくりさんを観なきゃいけないのか私には理解できない。
もっと言えば、そっくりさんにクイーンの一番綺麗な時代の4人を"上書き保存"されたくなかった。
それは「LIVE AID」でのシーンでも同様だった。あのキラキラした瞳と嬉しそうな表情をしたフレディの記憶を何者にも邪魔されたくなかった。

“魂に響くラスト21分 − 俺たちは永遠になる”という宣伝文句があるが、映画ではウェンブリーというスタジアム級コンサートの大成功をクイーン、特にフレディの苦悩(マイノリティやエイズ宣告を乗り越えて)に結び付けて、大団円で終わるところがどうにも腑に落ちなかった。
そもそも「LIVE AID」は飢饉に苦しむエチオピアやアフリカ諸国のために開催されたチャリティコンサートだ。 あの日、ロンドンとフィラデルフィアのステージに立った全バンドが無報酬だった。そのイベントの意義が映画ではほとんど見えてこない。(それでいいの?)
それに、アルバム『INNUENDO』の収録曲やプロモビデオのフレディを知っていたら映画に感動する以前にどーしても複雑な気持ちになってしまう。

しかし、そんな私の思いとは裏腹に、ナント映画はいまだ大ヒットロングラン上映中だ!!ひょぇ〜!
しかももっと驚いた事に、第76回ゴールデン・グローブ賞で作品賞と主演男優賞を受賞した!!わーぉ!

この授賞式には、ブライアンとロジャーもしっかり出席していて、その動画を見ていたら、ロジャーが(昔からよくやってたけど)、テレビカメラのモニターに自分が映し出されると、それがどのカメラなのかをしっかりチラ見していた。 また作品賞を受賞してステージに上がったブライアンとロジャーはすぐさまプレゼンターの女優ニコール・キッドマンと真っ先に握手していて、笑った 微笑ましかった。
そんな2人はインタビューにも嬉しそうに答えていた。
その様子を見ていたら、ふと、“やっぱり、売れるって大事なんだな〜”とあらためて思った。

今から10年以上前の事、某コピバンのライヴを観に行ったら、ギターの音もセットリストもバラバラで、愚痴も含めてその事を友達にメールしたら、意外な答えが返ってきた。
「いろいろ気に入らない事があったとしても、コピバンで客をたくさん呼ぶことが出来るバンドは、それだけで無条件に凄いと思う」と。 私は妙〜に納得した。
それはこの映画にも言える事かもしれない。
公開から右肩上がりの記録的な観客動員数だけでもこの映画は無条件に凄いと。

たとえ、あのシーンとかそのシーンとか色々気に入らなかったとしてもね・・・ハイハイ(--;



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