谷を越え山を越えて空高く流れてゆく
白い一片の雲のように、私は独り悄然としてさまよっていた。
すると、全く突如として、目の前に花の群れが、
黄金色に輝く夥しい水仙の花の群れが、現われた。
湖の岸辺に沿い、樹々の緑に映え、そよ風に
吹かれながら、ゆらゆらと揺れ動き、躍っていたのだ。
夜空にかかる天の川に浮かぶ
きらめく星の群れのように、水仙の花はきれめなく、
入江を縁どるかのように、はてしもなく、
蜿蜒と一本の線となって続いていた。
一目見ただけで、ゆうに一万本はあったと思う、
それが皆顔をあげ、嬉々として躍っていたのだ。
入江の小波もそれに応じて躍ってはいたが、さすがの
きらめく小波でも、陽気さにかけては水仙には及ばなかった。
かくも歓喜に溢れた友だちに迎えられては、苟も
詩人たる者、陽気にならざるをえなかったのだ!
私は見た、眸をこらして見た、だがこの情景がどれほど豊かな
恩恵を自分にもたらしたかは、その時には気づかなかった。
というのは、その後、空しい思い、寂しい思いに
襲われて、私が長椅子に愁然として身を横たえているとき、
孤独の祝福であるわが内なる眼に、しばしば、
突然この時の情景が鮮やかに蘇るからだ。
そして、私の心はただひたすらに歓喜のうちに慄え、
水仙の花の群れと一緒になって躍り出すからだ。