K&K QUEEN FAN CLUB / K&K VIRGIN QUEEN
Notes : December 6th 2003.
 【ミーハー情報学】

日本でのミーハー情報学にとって、その検討が不可欠な「情報」「メディア」「コミュニケーション」といった基礎概念に対して リアルタイムのクイーンファンの経験と心理、またその視点から考察を加えつつ、ミーハーがいかなる歴史的背景から構想されてきたのかを まとめてみました。

ミーハーの語源
 「ミーハー」を辞書で調べてみると、「みいちゃん、はあちゃんの略」と書いてありました。
「みいちゃん、はあちゃん」というのは、一説には明治時代にできた言葉で「みよちゃん、はなちゃん」という若い女性の名前の代表だそうです。意味としては、
1. 教養の低い女や子どもをいやしめていう語。「みいはあ」
2. 軽薄な、また、流行に左右されやすいこと。また、その人や、そのさま。「ミーハー」
3. 程度の低いことに夢中になったり、流行に左右されやすかったりする若い人たち。
また、その人たちを軽蔑していう語。「ミーハー」

それから、相撲の業界ではミーハーは「馬鹿」と言う意味を持つのだそうです。
ちなみに、その「馬鹿」という語源は司馬遷の『史記』(項羽と劉邦の話参照)での意味を持っていると思われます。 (そうだとすれば、現在使われている「バカ」の意味とは少し違いますので、念のため。)

■ 本格派ロックファンとの論争
COVER05  1975〜6年、日本でのクイーンは『Killer Queen』や『Bohemian Rhapsody』などの大ヒット曲で知名度は上がったものの、 当時のアンチクイーンから若い女性ファンを標的にして「ミーハーバンドのミーハーファン」などと、メディアを通じて猛攻撃を受けた時代がありました。 私自身、この時に初めて「ミーハー」という言葉を耳にして、同時に、蔑みの意味を含んでいることを直感しました。

 メディアが主にラジオだった時代、リクエストによるコミュニケーションが盛んでした。 そんな中、クイーンファンの若い女性からのリクエスト曲が増大して、クイーンの曲がリクエスト・チャートの上位に輝くや否や、 “本格派ロックファン”と称するアンチクイーンの攻撃が始まったのです。

 この詳細はクイーンの五枚目のアルバム「華麗なるレース」のライナーノーツを参照ください。 日本盤LPのそれには大貫氏が真剣に、"本格派ロックファン"に対してクイーンの優れた音楽性を熱弁してくれています。 しかし、それは裏を返せば、日本では、あの『オペラ座の夜』がヒットしたにも関わらず、この時点ではクイーンの音楽性を認める人は 少なかったということが言えるでしょう。同時に「クイーン」という名前は聞いたことがあっても、 実際彼らの音楽を聞き入れるまでには至らなかったとも言えると思います。

 アンチクイーンは今現在も少なくはありませんし、個人の趣味ですから、それは存在して当然です。
では、なぜクイーンが「ミーハーバンド」と呼ばれ、女性ファンが「ミーハー」だと軽蔑されたのか?
これは、当時の日本のジャーナリズムも大いに関係していると考えます。


日本のジャーナリストの思惑
 「最初にクイーンの人気に火がついたのは日本である」という記述を目にした事があると思いますが、 「最初にクイーンの人気に火をつけたのも日本人である」と言えると思います。なぜなら、私の研究レポート 【アルバムチャート統計による比較と考察】に記したように、当時の日本におけるクイーン人気はヒットチャートと比例していなかったからです。


ROGER1

 1975年、ブロンド碧眼のロジャーには若い女性が必ずや飛びつくだろう、それで人気を得てコンサート会場を埋め尽くしたいという ジャーナリストの思惑は、見事に的中して成功したと言えるでしょう。
そして羽田空港でのあの騒ぎに目をつけたのが、マスコミであり、音楽とは関係のないティーン雑誌や週刊誌にまでクイーンは掲載されました。 それらの記事の多くはクイーンのことよりもファン側(女性)の言動や反応について、少々オーバーに書かれていたのを記憶しています。
結果的に、クイーンはアイドル扱いとなり、黄色い声援をおくる女性ファンを指して「ミーハーファン」と呼び始めたのではないかと考えます。

 当時の風潮には、「ロックは不良」というのがありました。
しかしクイーンは、そのビジュアル面でもサウンド面でも、「不良」というイメージからは程遠く、 日本のジャーナリズムに登場したクイーンのキャッチ・コピーは、「ロックの貴公子」でした。「ロックは不良」とはエライ差です。

 「ロックの貴公子」に続いて「華麗なる貴公子」というのもありました。貴公子シリーズのキャッチコピーが悪いとは言いませんが、 日本ではどちらかと言えば、それらは少女趣味に勘違いされる要素が強く、かくしてクイーンは少女たちのアイドルバンドと軽視され、女性ファン全員を 「ミーハーファン」だとされてしまう事で、前記の論争が始まったと私自身は解釈しています。


コミュニケーションによるミーハー概念の推移
 70年代、ミーハーという言葉に対して私はかなり敏感になっていましたが、それ以後クイーンがビックバンドに成長していくに連れ、 それは自然と薄れていきました。その頃の「若い」女性も成長していったわけですから。
また、今となっては当時ミーハーと呼ばれ続けながらもクイーンのあらゆる情報を貪欲に収集して、クイーンの魅力がビジュアル面だけではない事を クイーンと共に証明できた事は、ミーハーと呼ばれた女性ファンの汚名返上でもあったかと思います。

ROGER3

 ミーハーの語源を考えますと、あまり使うべきではないと思いますが、今現在では、悪意に満ちた使い方をする人、される人は 少なくなったように感じています。逆にそれに反して、自らミーハー宣言をする人が増えてきた事で、 ミーハーという概念は(人それぞれではありますが)、その使い方も以前とは少し変化していると思います。 ファン同士のコミュニケーションの中において、「私はクイーンファンです、ちょっとミーハー入ってますけど」と言われると、親近感を覚えるからです。 自らのミーハー宣言はファン同士の潤滑油の役割を少し含んでいるように感じていますが、どうでしょう?

 例えば、73年のBBC番組でのスタジオ盤が話題になったとします。
そこで、演奏された曲目を並べてその音源の話を展開するファンと、まずはメンバーの衣装の話から始めるファンとでは、 その人の印象も少し違ってくるのではないでしょうか?
しかし、ここで誤解しないで欲しいのは、どんな話を展開しようと、前者も後者も同じクイーンファンであるという事です。 そこでファン同士がファンの区別をしてしまう事こそ、「ミーハー」という言葉の語源そのままの意味を持ってしまうと思います。


QUEEN3
あとがき

 70年代の著名なロックバンドの名が連ねられた中に、「クイーン」の文字を見つけると、 そこだけ華やかに見えてしまうのは、ファンの欲目でしょうか? それとも、いまだその時代のジャーナリズムに躍らされたミーハーな匂いを感じ取ってしまうからでしょうか?



Academy of QFC in the Filds