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          むか〜しむかし、ある所にボミ爺さんとジャー婆さんが住んでいました。 
         
         ボミは裁判所で会計士の仕事を、ジャーは川で洗濯を、そんな毎日が続いていました。 
         
         ある日のこと、ジャーがいつものように洗濯をしていると、と〜っても大きな桃が、 
         
         川上から♪レ〜ッロレロレロ♪と流れてきました。 
         
         ジャーはその気色悪い桃を拾い上げ、抱きかかえる様にして家に持ち帰りました。 
         
         ボミが戻ると、早速ジャーは二人で桃を食べようと、包丁を入れました。 
         
         ところが、何か固い異物に当たり、包丁の刃が折れてしまいました。 
         
         「あら、もったいない。包丁の刃が折れちゃったわ!」 
         
         ジャーが嘆くと、驚いたことに、 
         
         「それよりも僕の歯が」・・・何と桃の中から声が聞こえてきたのでした。 
         
         すると突然、桃が二つに割れて、中から大声で、 
         
         「♪あいげっそ、ロンリー、ロンリー、いや〜桃の中は孤独だったなぁ〜」 
         
         と歌いながら、かわいい男の子が出てきました。 
         
         ボミとジャーはびっくり仰天して腰を抜かしました。 
         
         でも年老いた二人には、子供がいなかったので、とても喜びました。 
         
         二人は、その子が男の子と知ってか知らないでか、 
         
         9月5日に生れたというだけで、“もも乙女”と名づけました。 
         
         それから、ボミとジャーは、その子を大切に育てました。
          
         
         乙女はご飯をモリモリ食べ、驚くほどの速さで大きくなってゆきました。 
         
         ある日のこと、乙女はボミとジャーに、深々と頭を下げ次のようにお願いしました。 
         
         「みんなを脅かす鬼を成敗するために、鬼ヶ島へ行かして下さい。」 
         
         「いつ行くんだい?」 
         
         「いざ今宵!」 
         
         ボミとジャーは同意すると、きびだんごを袋に入れ乙女に持たせました。 
         
         村を出てしばらく行くと、蟹がやって来て言いました、 
         
         「乙女さん、乙女さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私にくださいな。」 
         
         「一緒に鬼退治について来るなら、きびだんごをあげよう」 
         
         「えっ、お・お・おに・・・」 
         
         「そう、鬼退治!」 
         
         「どうしよう、う〜ん」 
         
         「ホラ、行くよ。」 
         
         「う〜ん」 
         
         「いらないのかい?ハッキリしないねぇ、蟹くん!」 
         
         「きびだんご・・・鬼退治、鬼退治・・・きびだんご、おに・・・きび・・・行く!」 
         
         こうして蟹は乙女についてゆくことにしました。 
         
         すると、二人はすぐに金の獅子に出くわしました。 
         
         「乙女さん、乙女さん、お腰に付けたきびだんご・・・」 
         
         と言いかけたところで、金の獅子はすかさず乙女からきびだんごを奪いました。 
         
         「獅子くん、素早い動きだねぇ。きびだんごはあげるから、鬼退治について来なよ!」 
         
         「行く、行く、ついて行く!」 
         
         金の獅子は事の重大さも何も考えずに、楽しそうというだけで、 
         
         乙女について行くことにしました。 
         
         乙女と蟹と金の獅子が歩いていると、銀の獅子がニコニコ笑いながら近寄ってきました。 
         
         「乙女さん、乙女さん、お腰に付けたきびだんご、三つ、私にくださいな。」 
         
         「何故、三つも?」 
         
         「私の妻と息子の分でございます」 
         
         心やさしい乙女は、きびだんごを銀の獅子に3つあげると、 
         
         銀の獅子はニッコリと笑いみんなについて行きました。
          
         
         こうして、乙女と蟹と金の獅子、銀の獅子は、4人で鬼ヶ島へ向いました。 
         
         島に着くと、鬼たちが大きな鉄棒を振り上げて襲いかかってきました。 
         
         乙女たちは、きびだんごをパクっと一つずつ食べました。 
         
         そして、蟹は得意の水中に鬼を誘い込み、平泳ぎキックとハサミで鬼の足をチョッキン、 
         
         金の獅子は、その美しく光り輝くたてがみ(顔)で鬼を魅了した隙に顔をひっかき、 
         
         銀の獅子というと、妻子の為に黙々と戦いました。 
         
         たちまち鬼たちは「マイッタ、助けてくれぇ」と逃げ惑いました。 
         
         乙女は3人に言いました 
         
         「鬼たちを縛り付けるんだ!」 
         
         鬼たちは、大きな目から涙を流して言いました。 
         
         「お許しください、もう人間たちを脅かしたりしません。奪った宝物はお返しします。」 
         
         こうして、乙女と蟹と金の獅子、銀の獅子の4人は、 
         
         鬼から取り返した宝物を車に積んで家に帰りました。 
         
         まるで億万長者の様に・・・。 
         
         おしまい。
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