第四章 フェアリー・フェラーの神技1999年3月、私は初めてロンドンのテート・ギャラリーを訪れた。
フロアーに入ってすぐ右側の一番はじっこに、ひっそりとした雰囲気の中にそれはあった。
「The Fairy Fellers Master Stroke」、それまで想像していたものより、 とても小さくて、よーく覗き込まないと、"見えて"こなかった。
私はちょっとドキドキしながら、目で前面の草むらをかき分けるようにしてフレディが歌う妖精たちを見つけ出しては好奇心を膨らませていた。そして今年11月(2004年)、クイーンのDVD『Live At The Bowl』と同じ日に、この本が発売されると聞いて、 早速DVDと同時に購入した。
しかし私は、あの時の好奇心がずっと残っていて、真っ先に開けて見たのは本の方だった。最初、主人公ダニーの天才ぶりを現す辺りは読んでいて頭が痛くなってきたりもしたが(^^; しかし、ダニーの母親の言葉一つ一つは、ダニーだけでなく私までも強烈に惹き付けられて、 画家の人生をたどるダニーの旅はとても重苦しい描写が多いにもかかわらず、一気読みしてしまった。
読み終えたあとに一気読みしたことをちょっと後悔したが、でも、絵画に描かれた謎を解こうとするダニーは、 私の中では、まるで"問題児"のミスター・フェラー。そして宇宙の秘密まで知っているというダニーの母親が書き残した手紙は胡桃。 それを知りたいという欲望に、いつしか自分が絵画に描かれた妖精の一人になってしまったみたいで、 ページを捲る度に「早く胡桃を割ってみせてよ！」と思う気持ちが強くなり、途中で本を閉じることなど出来なかった。
ちなみにこの本のラストシーンは好きです。次曲の「Nevermore」のような虚無感みたいなものを一瞬感じたりもするけれど、 本を閉じた後、まるで「Funny How Love Is」みたいな気分になれるから。
お薦めの一冊です！