第九章
ストーンズのライヴでブレイクスルー!
先日、ストーンズの東京ドーム公演に行ってきた。
しかし正直言って、自分はストーンズの熱心なファンでもないし、レコードも25年くらい前に一枚だけ買ったっきり。彼らのことも詳しくは知らない。
そんな自分が何故一人でライヴに行こうと思ったのか・・・。それはレンタルショップから何気に借りてきた映画がきっかけだった。
その映画のサントラを手掛けていたのがミック・ジャガーで、多分その映画の内容も手伝ってとの事だと思うけど、
ミックの歌声が突然、もの凄く胸に染みてきて、彼の息遣いさえ心に響いてきて、うまく言えないけれど、
この歳になって初めて、それまで気付かなかったものをミックの歌声の中に見つけた感じだった。
その後タイミングよく来日ツアーを知って、半ば勢いでチケットを取った。
でも悲しいかな、勢いはあれど財布の紐は固くて、買えたチケットはC席。2階席でした。
ライヴ当日、席に座って下の方を見るとスゴイ傾斜!2階席と言っても実際は、"2階席という名の3階席"なわけで、
座っていても下の方までよく見えたけど、ステージに出てきたメンバーは全員、米粒大だった。
ミックがステージの端から端までを元気に動き回る。それはかなりの距離だ。
一番驚いたのは、それまで随分長い"花道"だなと思っていたら、ステージの一部が突然浮き上がって、そのままその花道をレールにして
前面に移動してきた時だった。ゆっくり移動するそのステージの一部は細長い長方形で、その上でメンバーが演奏するので、さながら、
クイーンのブレイクスルーでの機関車みたいな感じだった。
でも、ストーンズのライヴは、1曲々に思い出がすり込まれてるクイーンとは全く別物だ。
ミックの歌声に、時折何度か涙ぐみそうになる。
でも同時にミックが放つパワーに、とても強く励まされる。
それは、なんていうか・・・たとえば、おじいちゃんが昔の話を熱く語りかけてくれてるみたいな。
でもその話を聞いているのは、孫でも子供でもなく、少しばかり成長した自分なワケで。
その熱い語りに、涙しそうになる自分がいる。しかし同時に、キースの顔の深いシワが、チャーリーの白髪が、そしてミックが、
「俺たちを見ろ!それでもまだ転がり続けるぜ!」という無言のパワーを放ち続けてくれる!
それは単に、「頑張れ、頑張れ!」って言って励ましてくれるのとは全っ然違う!
全身に受ける強烈なサウンドがそのまま私の心臓と重なって、そして勢いよく全身に血を送り出す感じだ。
ライヴ終了後、「ぁぁ、観に来てよかった!!」と、心から思えた。
翌週、仕事場での休み時間。
たまたま私の近くに座っていた大先輩(50代後半)が、なにやら隣の人と話していた時のこと・・・
「こないださ、後楽園に孫を連れていったのよ。そしたら、帰りがまぁ凄い人ごみでね。あの・・なんとかいう外人たちがドームに来てたの!
・・・えっとホラ、なんとかストーンズよ!」
まさかこの大先輩の口から、「ストーンズ」って言葉が出てくるとは思ってなくて、ちょっとビックリした。
でも、多分「クイーン」というバンド名までは出てこないだろうなぁ・・・なんて思ったら、ストーンズにちょっと妬けた。