今年(2007年)に入って間もない頃、
当掲示板に寄せられた新聞記事の情報に目が留まった。
それは音楽評論家、渋谷陽一氏のライヴ評で、「クイーンの伝統、パンクと融合」と書かれたタイトルだった。
紹介されていたバンドは、アメリカ、ニュージャージー出身の5人組、『マイ・ケミカル・ロマンス』
渋谷氏はその記事の中でクイーンの特性を、"大げさなメロディ・ラインやアレンジ、フレディ・マーキュリーの過剰な
装飾趣味"という、皮肉にも取れるような表現をしていたが、そんなクイーンとパンクは、「水と油」だが、
マイ・ケミカル・ロマンスは、それを見事に合体させた!という事だった。
これには強く興味を抱いた。
パンクは嫌いではないけれど、その単純さに飽きてくるのが正直なところだ。
それに、そういうライヴでよく見かけるのが、脳ミソをシェイクするようなヘッドバンキングをしなからの激しい"縦揺れ"である。
これは私には絶対無理だ。年齢的にもね。(ほっとけ!)
一方、クイーンのライヴで、始終ヘッドバンキングしながら、"縦揺れ"してる光景というのは、見た事がない。
あるとしても、「ボヘミアン・ラプソディ」のロック・パート(映画「ウェインズ・ワールド」の影響もあるが)、などの一部分で、
どちらかと言うと、手を左右に振っての“横揺れ”が真っ先に思い浮かぶし、会場全体が一体となって、
フレディと一緒に歌うシーンが代表的だ。
ということは、マイ・ケミカル・ロマンスのライヴでは、それらの"縦揺れ"も“横揺れ”も両方を体験できるということなのか?
それは是非、体験してみたいっ!・・・・そう思っていたら、その機会はすぐに訪れた。
2007年5月29日、マイ・ケミカル・ロマンス、武道館ライヴ!
武道館は数年前のエルトン・ジョンのコンサート以来になるが、入場の行列に並んでいてヒシヒシと感じた・・・「みんな若いっ!」
さすがに、Q+Pライヴの時とも客層が違う。(当たり前だ!)
男女の対比は半々くらいかな、男の子同士、女の子同士、カップルやグループなど様々だったが、
どう見ても、10代から20代の人がほとんどのように感じられた。
それだけに同世代くらいの人を見かけると、ちょっと安心する自分がいた。
開演15分前に席に着く。
一階席の東側からは、ステージまでの距離が近くて、立ち見のアリーナの様子もよく見える。
しばらくして客席の照明が消えた。オープニング・アクトは、BOUNCING SOULSというバンドで、いきなり私の周りの
ほとんどの人が立った。でも私はこのバンドを全く知らないので座ったままだったが、立っている人達のノリは、いまいち
乗り切れていなかった。
前座は30分ほどで終了。再び客席が明るくなり、私はまたアリーナの人たちを観察していた。
ふと、ストーンズの曲が流れていることに気が付いた。そして、その次に流れてきたのが、クイーンだった。
曲は、「Death On Two Legs」・・・なんでこの曲が?会場のほとんどの人が何の反応もしていない雰囲気を感じ取ってそう思った。
しかし、あとになって、ストーンズの曲が、「黒くぬれ/Paint It Black」だったことから、
"Black、Death"というキーワードに気がついて、妙に納得してしまった。
再び客席の照明が消えた!今度は私もすぐに立ち上がる。
曲のイントロが流れる中、右端からヴォーカリストのジェラルドが白塗りのメークと白衣姿で登場。
そこから一気に、新作アルバム『ザ・ブラック・パレード』の全曲が演奏された。
耳をつんざく程の爆発音や、いくつもの炎が吹き上がったりする過激な演出もあって、
アリーナ前方では、男の子たちが揉みくちゃになってジャンプしていた。しかも時折、高くジャンプして
前方の人達の頭上に乗っかり、そのまま雪崩れるように場外に着地する男の子が何人もいた。
また、大量の紙吹雪が舞ったり、大きな円柱型のドラム台にドラムセットが2つも置かれて
(座って使用しているのは1つだけ)、そのドラム台がクルクル回ったり、ステージ上から火花がナイアガラの滝みたいに
降り注ぎ、ビジュアル的にも観客を惹きつける。
特に、会場全体で携帯を取り出して、その光を左右に揺らす光景は、とても綺麗だった。
ジェラルドは高音の部分になると音を下げて歌っていたが最高にエネルギッシュで、それは観客の方も同じで、
それが双方ぶつかり合う形で二倍にも三倍にも膨れ上がり、会場を包み込んでいた。
アンコールでは前作アルバム『スウィート・リベンジ』の曲が演奏されて、
“アンコール”というより、“第二部”と言った感じで、こういうアルバム別のライヴ構成は私は初めてだったけれど、
マイ・ケミカル・ロマンスのライヴは、確かに、クイーンの伝統にパンクがうまく融合しているなと実感した。