小さい時から喉が弱い私は、よく扁桃腺を腫らして高熱を出していた。
独身の頃までは治るまでしっかり静養できたものの、子供が居るとそうはいかない。
しかも二人目が産まれて間もなくの頃、主人の実家で同居もしてた時、 またも扁桃腺が腫れ、
いきなり40度の高熱を出した。
すぐ病院に行くと、医者は開口一番「入院ですね」と言った。
それは多分無理だと思うなぁ・・と呟きつつ、
とりあえず家の者と相談しないと決め兼ねますと言って病院を後にした。
家に帰って義母にその事を伝えると
「えーっ、入院なんて、ちょっとどーするの?」 と、
完全に今夜からの食事の支度は誰がやるのと言う心配をしてくださっていた。
やっぱりなぁ〜、生まれたばかりの下の娘も居るしな。
「入院は無理です」と電話で医者に伝えると、「じゃ通院してくださいね」って事になり、
5日間車で通った。 高熱でフラフラになりながも!
点滴も最終日となった日のこと。
外来診察時間は既に終了していて顔なじみになっていた看護婦さん2名と婦長さんが談笑していた。
少し疲れ気味に点滴を受けていた私を横目でジッと見ていた婦長さんが、
驚く様な事を言い出した・・・
婦長:「扁桃腺は切った方が早いわよ、でもね、もうひとつ良い方法があるの」
私:「なんですか? それ」
婦長:「○○町に有名な鍼師がいるのよ、ヤミだけどね」 私:「はぁ?効くんですか〜?」
婦長:「そりゃ〜もぅ有名よ、医者いらずって」
”医者いらずってアンタ、婦長さんやんか!”
続けて婦長はこう言って部屋を出て行った。
「信じる信じないは勝手だけど、騙されたと思って一度行ってみたら?」
その日、私はその事を旦那と義母に話すと、親戚の叔母さんも聞いた事があると言う話。
ヤミってことで、なんかあったら何も保証はない、 その事が一番気になってたものの、
それまで独りで行くのは躊躇してたと言う。
何かあってからでは遅いけど、こんな高熱でキツいのはもうイヤだと思い、後日体調が回復してから、
意を決して、その鍼師のもとに出かけた。
情報だけを頼りに私達を乗せた車は普通の民家の道を行く。
農家ばかりである、なんかドキドキしていた。
叔母さんが何故か小声で叫ぶ、“ちょっと停めて!多分・・ここよ!”と、
何の看板もないホントに普通の農家を指した。
多分って、おいおい大丈夫かぁ?
叔母さんの後に続いて家に入ると、男の人がまるで私たちが来る事を知ってたかの様に
黙って頷いてこの部屋で少し待ってて下さいと言い残し、隣りの部屋にスッと消えた。
一体、口コミで何人の人が訊ねて来てるのだろうか?と思った。
薄暗い部屋で待つ事5分くらい。 さっきの男の人がなにやら手に持って現れた。
「靴下を脱いで、そこに立って」と言った。
言われた通りにしてると、脚首の踝の下あたりにチクッとした痛みが走った。
と思ったら、ツツーと流れて出た一筋の血を拭き取って、「ハイ、終りました、次・・」と言った。
叔母さんも同様に処置され、ものの3分くらいで終了した。
靴下を履き、お辞儀をして、叔母が礼金(3000円)の白封筒を差し出す。
男の人はそれをスッと受取ると、またすぐ隣りの部屋に消えた。
何事もなかったかの様に、その家を出て、通りに停めてある車に乗り込んだ。
・・?。これでもう高熱とは本当に おさらばなのか?
効いたのか効いてないのか、全然わからない。
「何てことなかったね」と叔母さんと他愛無く笑う。
それから数年後、
何度か扁桃腺が腫れて病院に行く事は数回あった、がしかし、38度以上の高熱は不思議と出なかった。
それにただの風邪でも高熱は出なくなった。
先月下旬に何年かぶりにインフルエンザにかかり、すぐに病院に行った時、
医者が「これから高い熱が続くと思うから・・」と解熱剤をくれたのだが、
やっぱり38度以上は出なかった。
そういう時いつも決まって思い出してしまう私の貴重な体験です。 |