最初に正直に言います、
私は『ロックの殿堂』という言葉は知っていても、詳しいところまでは全く知りませんでした。
それで今回初めて、The Rock & Roll Hall of Fame−
“ロックン・ロール・ホール・オブ・フェイム”を調べてみて、
その歴史は意外と浅かった事にまず驚きました。
『ロックの殿堂』の設立は、音楽業界のリーダーたちによるロックの殿堂財団の創設(1983年)に始まり、
第一回目のロックの殿堂入り受賞者が発表されたのが1986年です。
1986年なんて、ちょっと前って感じですよね?私はもっと古くからあるのだろうと思っていました。
が、しか〜し!クイーンが受賞したパフォーマー部門の選考対象をよく読むと、
“最初のレコード・リリースから25年を経過したアーティスト”となっていて、そこで少し納得しました。
というのも、1986年から25年を引くと、第一回目の対象者は、
1961年以前にデビューしたアーティストになりますよね。
そうすると、ロックが発展していった1950年代に活躍した人たちが主流になるだろうし、
その中に、ロックの先駆者と言われる人たちは少なくないでしょうから、
もう一つの選考基準である“ロックに大きな影響や功績を残した人”にあてはまるのも当然かなと。
それに、“25年を経過”という言葉からも、長く続けるという事は重要で、
何事においても、“続ける事で評価もされる”という事なんだと思います。
ちなみに、アメリカのクリーブランドにある『ロックの殿堂博物館』(Rock'n Roll Hall of Fame&Museum)は、
アメリカの五大湖の1つ、エリー湖のすぐ側にありますが、なぜクリーブランドにあるのかというと、
(真実かどうかは定かではありませんが)、1950年代初期に、クリーブランドのDJによって最初に、
"ロックン・ロール" という言葉が世に送り出されたからだそうです。
ところで、日本のミュージシャン、B'zが数年前に、“日本人初の快挙!米ロック殿堂入り”と報道されて、
自分もちょっと勘違いしていたのですが、それは、ハリウッドのギター関連団体が主催する
『ハリウッド・ロック・ウォーク』の殿堂入りであり、『ロックの殿堂』−ロックン・ロール・ホール・オブ・フェイムとは
無縁なんですね。
その『ハリウッド・ロック・ウォーク』というのは、ロックン・ロールを芸術として発展させるために貢献した偉大なミュージシャンらを称えるために、
1985年に設立されたもので、ハリウッド中心部にあるギター・センター・ストアーの入り口にある
展示コーナー(手形とサインが埋め込まれている)を、こう呼ぶそうです。
これもクイーンは、
2004年に『ハリウッド・ロック・ウォーク』の殿堂入りしています。
その『ハリウッド・ロック・ウォーク』と間違えやすいのが、『ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム』ですね。
とは言え、知名度としては後者の方に軍配が上がるかもしれませんが、
『ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム』の方は、1959年にハリウッド商工会議所によって設立されたもので、
映画、テレビ、舞台、ラジオ、音楽などの分野で活躍した人を対象に選出されます。
こちらもクイーンは、2002年11月に、『ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム』の殿堂入りを果たしていますが、
その選出について調べると、映画や音楽スタジオ、ファンクラブでも申込用紙から選考候補者を投票できるとあり、
毎年5月にそれを締め切って、6月に選考委員会が候補者20人を選出。
その20人をハリウッド商工会議所が承認して決定するという流れだそうです。
ただ、このセレモニーに出席する際には、(星型プレートの)設置&管理費として、
1万5千ドルを支払うことになっているそうです。でも大抵は、映画会社やレコード会社がプロモーション費で清算するとか。
クイーンも星代?の1万5千ドルを支払ったわけですね。
それから、作詞作曲家のジョニー・マーサー氏及び音楽出版社のエイブ・オルマン氏とハウイー・リッチモンド氏によって、
1969年に設立された『ソングライターの殿堂』−ソングライターズ・ホール・オブ・フェイムというのがありますが、
これもクイーンは2003年6月に受賞。このセレモニーにはロジャーとブライアンが出席して、
カントリー界のソウル・クイーンと呼ばれるWynonna Judd(ワイノナ・ジャッド)のヴォーカルで
「Crazy Little Thing Called Love」を、ブライアンのヴォーカルで「We Will Rock You」を
演奏しました。
そして、(まだあるんかいっ!^^;)
2004年に、『UK版ロックの殿堂』と言われた
"UKミュージック・ホール・オブ・フェイム"というのがスタートしましたが、
こちらは残念ながら、式典が開催されたのは数回だけで資金繰りがつかずに僅か4年で終了。
しかし、クイーンは2004年にその殿堂入りしています。ちなみに、この時の殿堂入り式典をきっかけに、
クイーン+ポール・ロジャースのプロジェクトがスタートしました。
その時の映像は、こちら。
映像画質は悪いですが、それが気にならなくなる程、やっぱりポール・ロジャースは上手すぎですっ!
あと、「We Are The Champions」の冒頭、
歌い出しの前にポールが“Oooh〜♪”と言った後、ブライアンのギターの不協和音?がそれに呼応するかのように鳴り響いて、
それがまた堪りませんっ!
他、コーラスには、個性的な声ですぐ分かる(^^;トリアナ・モリス、
キーボードはスパイク・エドニー、ギターにジェイミー・モーゼズ、そしてベースが、知る人ぞ知る!
ピノ・パラディーノです!彼はイギリスを代表するセッション・ミュージシャンの1人ですが、
そのプレイスタイルにはジョンと似ている部分もあります。
こうして見ると、クイーンは2000年12月に『ロックの殿堂』入りが決定した後、怒涛の殿堂入りとなったワケですね。
ちょっと年代順にまとめてみると・・・
2001年『ロックン・ロール・ホール・オブ・フェイム』
2002年『ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム』
2003年『ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム』
2004年『ハリウッド・ロック・ウォーク』
2004年『UKミュージック・ホール・オブ・フェイム』
と、4年間で5つも殿堂入りしています。
しかし、これだけあると、日本語で簡単に“殿堂入り”と略したら、
どれがどれか分からなくなりますよね。
というか、書いてる自分がそうだったのですが(^^;。
さて、話しをアメリカの『ロックの殿堂』に戻します。
クイーンが受賞したパフォーマー部門の選定方法を調べてみると、
ロック史の研究家によって構成されるロックの殿堂財団の選考委員会が、毎年候補者15人を選定する、と書かれてあり、
その“ロック史の研究家”ってところに凄く興味を持ちました。
そもそもロックの歴史を語る上で、「ロックとは?」という質問には明確な回答は得られないように思うし、
ロックのルーツを辿ると、アメリカには「カントリー」と「ブルース」の基盤がありますし、
楽器にしても、ギブソンのレスポール・モデルなど「エレクトリック・ギター」が出現したのはアメリカですから、
ロック発祥の地がアメリカかイギリスかで、たびたび論争にもなっている事を考えると、
明確な選定基準というのは出せないのではないかと思ったりしました。
そして、その候補者15名は、各国の約千人の“ロック専門家”に送られ、
彼らによる投票が行われます。それで最も多くの票を獲得、または
総投票数の過半数を得たアーティストが受賞者となり、
毎年の受賞者の数は、約5〜7人程度になるそうです。
さて、各国って何カ国でしょうね?・・・まぁ、個人的には専門家より研究家の方に興味がありますが、
とにかく、これまで殿堂入りした受賞者リスト(パフォーマー部門)をチェックしてみました。
1986年の一回目と1987年の二回目の受賞者は、
全員アメリカ出身のアーティストのようですね。
1988年にビートルズが入っているのを筆頭に、その後、ストーンズ、キンクス、ザ・フーらが
殿堂入りしていますが、それが25年をプラスした各バンドのデビュー順になっているので、
まるで、事前にスタンバイさせていたかのようにも感じました。
しかし、それらの後の受賞者リストをよく見てみると・・・
個人的に気になったのが、ピンク・フロイドは入っていても、
キング・クリムゾン、イエス、ELPとかは入ってなくて、
それより先に、ムーディー・ブルースくらいは入っていてもいいんじゃないかと思ったりして・・・
もしかして、ロックの殿堂選考委員会は、プログレには冷たいのかも。
また、ハードロックのジャンルにしても、“このバンドが入っているのに、なぜ?”
と思うのがいくつかありました。
もちろんそれらは、好き嫌いは別としてですが、60年代のブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれる
アーティストたちが(ゆっくりながらも)順々に殿堂入りしているところを見ると、やはり選定基準において、
“アメリカでの影響力”というのは高いポイントとなるのでしょうかね?
しかし受賞者リストの年代が新しくなるにつれて、まるで後出し?みたいなところや、
なにかしらの枠組みというか、暗黙的アウトラインがあるような気がして、
そうすると、やはり上述したように、明確な選定基準というのは出せないのではないか?というところに戻ってしまいました。
ここで、ふと思いました。「自分自身のロックのルーツって何だろう?」と。
ルーツって言葉は、ちょっと立派過ぎますが、自分が一番最初に感じたロックって何だったっけ?と思い、
記憶を辿ってみました。
多分、自分が一番最初に感じたロックは、井上陽水になります。
って、それはフォークだろう!と突っ込まれそうですが、
でも1972年に発売された『断絶』のレコードを初めて聴いたとき、どの曲もバックのエレキ・ギターがカッコ良くて、
そこにまたピアノのメロディが絡んで、陽水の曲は拓郎とは全然違う印象があり、
フォークだとは思えませんでした。でも、だから言って「これがロックだ」とまで思ったワケではなく、
“エレキ・ギターがカッコイイから”という単純な発想からです。
そう言えば、確か、当時発売されたクイーンのLPレコードの帯には、
“フォーク/ロック”と書かれてあったのを覚えていますが、
これは「ロックの定義」にまで発展しそうなのでここでは止めておきます(^^;。
それとは別に、初めて洋楽ロックに目覚めた曲は?というと、
レッド・ツェッペリンのセカンドアルバムで、「Whole Lotta Love」を聴いた時でした。
逆にクイーンを初めて聴いた時(これもセカンドが先でしたが)は、“これってなに?”という感じでした。
皆さんが一番最初に感じたロック、or 初めてロックに目覚めたレコード(曲)って何でしたか?
おっと、今回の特集は、クイーンの『ロックの殿堂入り』でしたね(^^;すみません。
2001年3月19日、アメリカ、ニューヨークで授賞式セレモニーが行なわれました。
こちら↓、その時の模様が見られます。
この時のキーボードはスパイク・エドニーで、ベースはスティーブ・バーナクル
(ロジャーの1999年のエレクトリック・ファイヤー・ツアーのサポートメンバー)で「We Will Rock You」を演奏。
最初にブライアンがボーカルをとっていますが、後半のボーカルはロジャーで、ミュージカル・バージョンになっていますね。
それにしても、この時の会場内の人たちのリアクションが寂しいのは私の気のせい?
この後、ブライアンはフー・ファイターズのデイブとテイラーの二人を紹介して、「Tie Your Mother Down」を一緒に演奏。
その映像はこちらからどうぞ。
この殿堂入りアーティストたちによるジャムセッションは毎年恒例で行なわれいて、
当初ブライアンは、「エアロスミスと共演できたら素敵だろうな」とコメントしていました。
しかし実現はしませんでした。
逆に、クイーンと一緒に殿堂入りしたエアロスミスのジョー・ペリーは、こんなコメントを残したそうです。
「・・・俺達、追い出されたのかな、という気にもなった。
だって、殿堂と言うと、引退して3年から5年経ってやっと候補になる資格が与えられるって感じじゃないか。」と。
ということは、25年経過では短すぎると?!
うーん、でもジョーのこの気持ちは分かる気がします。エアロスミスはこの時(今現在も)、現役バリバリですから、
クイーンとは立場も違えば、捉え方も違ってくるのは当然でしょうね。
だけど、そういう考え方は、“バンドが今なお現役!”の証拠だと思うだけに、クイーンファンとしては妬ましいくらい羨ましいです。
ジャムセッション後のクイーンの受賞スピーチの映像はこちらをご覧ください。
この時、ジョンは欠席でしたが、フレディのお母さんとフレディの妹カシミラ、カシミラの旦那さんと息子さんが
一緒に出席したそうです。
ロジャーからフレディのお母さんが紹介されて、観客がスタンディング・オベーションで迎えるシーンは
ちょっとグッときますね。また、それと同じくらい感激してしまったのが、
スピーチを始めたロジャーがアップになった時、その前にトロフィが4つ並んでいた事です。
それは当然の事ですけど、でもそれを見た瞬間、なんだか、すごーく嬉しくなってしまいました。
さて、これまで、結成時から駆け足でクイーンの歴史を辿ってきましたが、
この企画ページの構想はちょうど昨年の今頃思い付いて、全11回として取り上げる年代(特集)に迷いはありませんでした。
でもそれは多分、クイーンファンの皆さんそれぞれにクイーンとの思い出があると思いますから、
これまで取り上げてきた特集年代には不満も感じられたかもしれません。
しかし、時系列で細かくクイーン年表を書いていったとしても、それは単に参考資料の書き写しというか、
血が通ってないというか、年月日でしかクイーンの活動を知ることができないと思います。
クイーンは2011年の今年、日本での最初のレコード・リリースからは37年経ちます。
ファンの皆さんのファン歴もそれだけ長くなっていると思いますが、
そのファン歴がどんなに長くても、逆にどんなに短くても、大事なのはその中身であり、
それぞれのそのファン歴にこそ、クイーンの歴史が刻まれていると思いますし、それがクイーン年表に綴る内容としても、
一番相応しいのではないかと思います。
まぁ、あんまり古いと記憶違いというのも出てくるかもしれませんが、
でもたとえそれが勝手な思い込みによるものだとしても、個人的にはそれもクイーンへの愛情の一つだと思っています。
2001年の『ロックの殿堂』入りから、クイーンは立て続けにいろんな殿堂入りを果たしていますが、
それらの授賞式で、“クイーン!”と紹介されても、ブライアンとロジャーの二人の姿しか見られなくなったのは
とても残念に思いますが、でも自分の中では、今でも「クイーン!」と聞くと、
そこに描かれるのは必ず、フレディ、ブライアン、ロジャー、ジョンの4人の姿なんです。それも、4人とも必ず70年代の若い時の姿で(笑)。
でもそれだけはこれからもずっと、永遠に変わりません。
何年経っても、クイーンとの思い出は宝物であり、夢であり、「クイーン」は明日への希望の光です。
以上、「今月は何の日?」これにて完結です。
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
Thank God It's Christmas!!
updated:2011/ 12.01