Mikanの日記〜別冊〜

引越し当日。叔父が知人に頼んで軽トラを借りてきてくれた。



荷物は家で使ってた母の嫁入り道具だった古いタンスと食器一人分、布団1組、

そして自分がそれまで使用していた持ち物、衣類、生活雑貨、本とカラーボックス、

それに大事なコンパクト・レコード・プレーヤーとレコード。

  レコードだけは命の次に大事で、むちゃ重たい枚数だったけど手持ちで運んだ。



軽トラに載せられた荷物は古い家の玄関に通じるあの隙間道からは当然運べない。

その為、軽トラは駅前広場に通じる大きな通り(車両通行禁止区域)に横付けされた

  トラックの荷台から塀越しに畑の方に父と叔父の手で運ばれた

  タンスが一番大変だったが、荷物が少ないので短時間で全部運び終えた。



その日の夕方、両親と叔父叔母らと一緒に食事をした。

これからの生活の仕方と説教をこってりと聞かされた。

説教は小学生を相手にした様な事ばかりだった。

    “うん、わかった、うん わかった ”  と返事する私に、

    “うんじゃないでしょ、はいでしょ ” ・・・こんな感じ



その後、私は一人「間借り」の部屋に帰宅した。

荷物が入ってもガランとしてる、それもそのはず、まだカーテンがなかった。

でも透けて見えないから気にはならなかった。それより、

団扇も扇風機もないので、とにかく暑くて仕方なかった。

  私は何度も(鉄の塊の)流しに頭を垂れて、"水浴び"をしていた。



翌日、残った資金で早速買い物に行った。

カーテンと洗濯紐、小さいガスコンロと、これまた小さい冷蔵庫を買った。

冷蔵庫だけは資金の関係でリサイクル店で購入した。3000円で配達料プラス100円。



まず、窓にカーテンを掛け、

テーブルの変わりにダンボール箱を置いてタオルをかぶせた。

壁にはクイーンのポスターを貼った。すると結構部屋らしく見えて妙に嬉しかった。



それから階段の踊場(部屋の入り口)に新聞紙を敷いてからダンボール箱を重ね、

それを下駄箱にした。あと、余ってたダンボールを適当な形に切り、

"うちわ"とマジックで書いた団扇も作った。デカイやつを2枚!

    



夕方遅くに冷蔵庫が届けられてから、銭湯に行った。

小さい頃に何度か親に連れられて行った事はあるが、一人で行った事はなかった。

銭湯入り口の壁には料金表が貼ってあった、

  − 入浴料200円、洗髪230円 −

私はちょっと緊張しながら銭湯の暖簾をくぐって、230円を支払った。



・・自分は女なんだけど・・

何故か脱衣所で目にする見知らぬ女の人の裸にドキドキしてしまった

しかも、大きいなぁ〜とか、形がいいなぁ〜とか、ちらちらとチェックもしていた。

そして誰も自分を注目する人等いないのに、隅っこでゴソゴソと脱いで浴場に入った。



小さな丸い水風呂が手前にあって、壁側に洗い場、窓側に大きなお風呂が一つあった。

洗い場のとこには水が青、お湯が赤い色した丸い取っ手があり、押してないと出ない。

でもちょっと押しただけで両方とも勢いよく出る。

ちょっと不便な思いをしながら身体と髪を洗い、大きなお風呂に入った。



先に浸かっていたおばさんと目があった、でもなんでか、すぐ目をそらした私。



首まで浸かって、ゆっくりと上を向いたら、その先にある窓で視線がとまった。



  なんか窓に張り付いてる!  なんだ?



白くて細いのが3つ。なんだろう?と少し身体を上げて近寄り、目を凝らした

と同時に、私がさっき目をそらしたおばさんが言った



 “あれはヤモリだよ”と。



窓の外側にヤモリが張り付いていると言う。

18年生きてきて初めて見た。ヤモリの腹!。。白いのねぇ。。



それを聞いて、もう少し近寄り、珍しげに観察する私。

私は最初目をそらしたのに、そう言ったおばさんは笑顔だった。



サッパリして銭湯を出てから、隣りにあるコイン・ランドリーに寄った。

コイン・ランドリーはその時生れて初めてだった。



洗濯機は5台ずつ両端に並べてあって、奥に大きなガス乾燥機が1つあった。

ガス乾燥機も生れて初めて見た。



動いてる洗濯機は何台かあったけど、人はだれも居ない。



  −洗濯物を入れて、洗剤を入れて、100円を投入 −

蓋に書いてあったその説明書きを読み、洗濯物を中に入れてから気がついた。



   洗剤忘れてきた!



ふと見回すと、使用している洗濯機の蓋の上に洗剤箱が置いてあった。

視線が何度かそれを捉える

でも、今にも誰か人が入ってきそうな気がして、

洗濯機に放り込んだ洗濯物を取り出し、何事もなかった様な顔してそこを出た。



   はぁ、銭湯とコイン・ランドリー行くだけで、なんでこんなに緊張するんだ・・

そう思った時、

サッパリしたばかりの身体から再び汗がシャツにしみている事を不快に感じた。



部屋に戻った私はすぐ「流し」に頭を垂れて水浴びした。

そしてそこで洗濯も済ませた。

板張りの6畳の方に洗濯紐を端から端に引いて、それらを干した。



明日から仕事だ。

給料もらったら、一番先にベッド買いたいな、と思いながら布団に入った。

初めて貰った給料は手取りで 8万9千円でした。
そこから両親にそれぞれ衣服を買って贈り、1万を頭金にして5回のローンでベッドを購入しました。
そしたら、母親が「ローンなんて組んでこの子は!ローンなんて、ローンなんて・・」と、しきりに嘆きつつ、
それを払ってやっていけるのかをかなり心配してました。

初めての給料で、生れて初めてのローン・・それがベッド!(^^)
だって、部屋にベッドがあると、なぜかそれだけで裕福になった様な感じがしてたから。


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