その日は昨夜からずっと雨が降っていた。 夜勤明けだった私は朝11時に帰宅してからずっとベッドの中にいた。 お腹が空いて、やっとベッドから出たのは夜9時過ぎ。 雨も小降りになっていたのでお弁当を買いに行くついでに銭湯に行く事にした。 洗面道具を持って玄関を出た。しかし3歩歩いたところで脚が止まった。 ビルとフェンスの間の道がまるで「どぶ川」状態! それを見つめながら私が考えついた行動は・・・ まず、持ち物を整理して洗面器に全部押し込む その洗面器を覆い被す様にタオルをかけ、それを頭にのせる その覆い被したタオルの両端を顎のところで結ぶ そして全くフリーになった両手でフェンスの網をガシッと掴み その網目(空いている部分)に片足ずつ入れて、横這いに進む。 つまり、フェンスをよじ登る要領で横に進んでいくのだ。 しかし頭に洗面器がのっかってるので、それがフェンスに当たるとズリ落ちてしまう そうならない様に腕を伸ばした状態で進む。 これは、かなり体力を要する。それに雨でフェンスが濡れていて滑りやすい。 意外と難しい。 しかし、端から見れば、変人と言われても仕方のないこの様相 車道に出る前にはなんとかしなくちゃ・・ 車道の光がフェンスに反射してるすぐ手前まできた。 私はフェンスにしがみついたまま、頭の上の洗面器をフェンス側に少し傾けた、 その状態で右手で顎のタオルの結び目をずらし顎から外した、 そして洗面器を被せたタオルごと右手で掴んで身体の前にもってきた、 左手だけで身体を支えたまま、車道側に身体を向けてから、 効き足を軸にしてジャンプ!そのとき、洗面器から中の物が飛び出さない様に 上半身を半分倒した様な状態で着地した。 車道に着地した時、運良く人は通っていなかったし うまく着地出来た事に、ちょっと自慢に感じて、一人でニヤついた。 銭湯でサッパリした後、弁当屋さんに入った。 弁当と缶ジュースを買って店を出ると、 さっきまで小降りだった雨が本降りになっていた。濡れる事に変わりはないけど、 洗面器を頭の上にして、私は走った。 顔も濡れる、トレーナーも濡れる、ジーパンも濡れる、洗面器に雨水が溜まる 「どぶ川」の前まできて、私は悟った。 車道側からあの変な恰好なんて出来やしない・・ 両手に荷物持ってるし、多すぎるし、洗面器に全部入らないし・・ それ以前に、ここまで濡れてたら、何したって一緒・・ 本降りの雨に打たれながら自分は迷う事なくジーパンの裾を膝まで捲った。 そして意味はないと判っていても爪先立ちで「どぶ川」に足を踏み入れたのだった。 辿り着いた玄関先でタオルを絞り、足を拭いて部屋に戻った私は 「流し」で頭から足まで洗った。 ちぇっ!銭湯代の230円損したな〜 そう思って、少々乱暴に弁当の袋から弁当を取り出した そしたら、弁当と一緒に袋から雨水が畳に零れ落ちた。 傘を持っていかなかった自分が悪いとは分かっていても、拭いてる畳に八つ当たり。 しまいには、畳を拭いたそのタオルを丸めて思いっ切り強く壁に投げつけた。 後日、私は畑から手頃な大きさの石を探してきて少々不細工な「渡り石」を置きました。 それからは晴れの日もその隙間道を通る時は、その渡り石の上をピョンピョンやって、 ちょっとした楽しみを味わってました。でも時々踏み外してグキッ☆とかなった時もあったけど。 |